東洋医学や西洋医学の知識を活用し、人々の健康基盤に寄与している治療院。そんな治療院の開業を実現する場合、資格の取得から事業計画の作成、物件選びなど、多岐にわたる準備が必要になります。そういった開業準備を怠ると、経営難に陥るだけでなく、閉業に追い込まれる可能性が高いです。
治療院の開業を成功させるには、開業に至るまでの手順をしっかりと把握し、確実に取り組む必要があります。そこで本記事では、治療院を開業に必要な準備を具体的な流れとともに解説します。
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治療院とは
治療院は、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師、柔道整復師といった国家資格を持つ人が施術を行う施設です。具体的には、指圧院や接骨院・整骨院、鍼灸院が挙げられます。これらの医療施設の目的は、身体の慢性的な痛みや不調などの改善です。施術行為そのものの気持ち良さを目的としていない点が、マッサージ店やエステサロンといったリラクゼーション施設との違いとなります。
そんな治療院の開業するまでの流れは下記の通りです。
治療院の開業手順
①開業する治療院の種類の決定
③ターゲットとコンセプトの設定
④事業計画と資金計画の策定
⑤開業場所の選定
⑥物件選び
⑦レイアウト設計、必要な備品や機器の選択
⑧新規開設手続き
⑨集客方法の策定
⑩各種届け出の提出
①開業する治療院の種類の決定
開業するにあたり行うべき最初のステップは、営業する治療院の種類選びです。提供する施術の違いにより、治療院の名称は変わってきます。そのため、自分が行いたい施術に合わせて、どんな治療院を開くか考える必要があります。代表的な治療院は、以下の通りです。
指圧院
指圧院は、日本の伝統的なマッサージ療法である「指圧」を行う施設です。指圧治療では、手や指を使って全身にあるツボを刺激することで、人間の体に備わっている自然治癒力を高め、健康を促進させます。衣類の上から遠心性(身体の中心から手足の先に向かう方向)に施術するのが特徴です。
接骨院・整骨院
整骨院と接骨院は呼称が異なるだけで、どちらも柔道整復師が開業した施設です。施術では、痛みの発症している一部分に対して、主に「柔道整復術」により治療します。柔道整復術は、怪我人を回復させる技術として、古来より伝承されてきた日本特有の医術の一です。外傷によって発生する骨折や脱臼、捻挫などの損傷に対し、患部の整復や固定を行うことで、自然治癒能力を最大限に発揮させます。
鍼灸院
鍼灸院は、古代中国から発祥した伝統的な医療法である「鍼(しん)」と「灸(きゅう)」を主な治療方法として提供する施設です。これらの治療法では、体のツボとされる経穴に針を刺入したり、温熱刺激を与えたりすることで、自己治癒力を促進し、さまざまな健康問題を改善することを目的としています。
②資格の取得
治療院は国家資格を持った人でないと開業できません。そのため、開業する治療院の種類を決めた後は、提供する施術内容に対応した資格を取得する必要があります。日本国内の治療業で国家資格化されているものは下記になります。
- あん摩マッサージ指圧師:指圧院の開業に必要
- 柔道整復師:整骨院の開業に必要
- はり師:鍼灸院の開業に必要
- きゅう師:鍼灸院の開業に必要
これらの資格を取得するには、国が定めた教育機関に3年以上通った上で、国家試験に合格する必要があります。はり師ときゅう師は、別々の資格ですが、同一試験の項目で鍼と灸の項目が分かれているだけなため、どちらの免許も有している人が多いです。
また、現在の国内における鍼灸治療はマッサージや手技の治療とセットで行われることも少なくありません。そのため、通う学校によっては、はり師ときゅう師の資格を、あん摩マッサージ指圧師とセットで取得する場合もあります。
③ターゲットとコンセプトの設定
治療院の国家資格を取得したら、開業に向けた具体的な準備に入っていきます。その際にまず行うべきなのが、ターゲットとコンセプトの設定です。この二つの要素は、事業の成功に欠かせないものであり、治療院の経営における軸となります。
ターゲット
ビジネスを始めるうえでターゲットの設定は、今後の方針や売上に直接関係する要素です。年齢層や性別、職業など、様々な側面でのターゲットが考えられます。細かく想定顧客層を絞ることで、競合の治療院と差別化するためのポイントとなります。
また、メインターゲットが決まれば施術単価がわかります。これは、売上予測において重要な情報です。さらにターゲットの選定は、どういった場所に開業するか、治療院のコンセプトをどうするかなどのヒントにもなり、院の経営方針の基盤となります
コンセプト
ターゲットを設定したら、次は治療院のコンセプトの設計です。コンセプトとは、どんな特徴を持った院であるかを明確にする、テーマや骨子のことです。ターゲット層とテーマがマッチしない場合、治療院に入りづらかったり、リピートにつながらない可能性があります。
しっかりとしたコンセプトを設計することで、施術内容が明確になり、安定した経営の実現を図れます。
④事業計画と資金計画の策定
経営の軸となるコンセプトを考えたら、治療院経営の詳細である事業計画と資金計画を作成します。
事業計画
事業計画は、事業の目標を達成するための具体的な行動計画です。この計画は、今後の経営を進める上で想定されるリスクや課題を探るために必要です。治療院の事業計画書では、一般的に次の項目を記載します。
項目 | 概要 |
創業の動機 | 創業の目的や動機を記載 |
経営者の経歴 | 勤務先や業務内容、役職や経験を記載 |
施術サービスの内容 | 具体的な施術内容を記載 |
ターゲットや競合、市場 | 治療院のターゲットや競合、市場について記載 |
従業員 | 雇用予定の従業員人数を記載 |
借り入れの状況 | 既存の借入状況を記載 |
必要な資金と調達 | 資金の調達方法と利用用途を記載 |
事業の見通し | 売上高や経費、利益の予想を記載 |
事業計画書は、融資先に提出する書類でもあります。事業資金の借り入れを検討している場合は、自院の魅力を担当者にしっかりとアピールできるような計画書を作成することが求められます。
資金計画
起業を行う上で、事業計画書を作成することはもちろん重要ですが、資金計画書の作成も忘れてはいけません。治療院を開業するに合計で1,000万円前後の資金を要します。その全額を自己資金でカバーするのは、非現実的であり、多くの人が借り入れをします。こうした資金の流れを把握しつつ、管理するために必要なのが資金計画です。
資金計画を作成することで、どれだけの確実性や収益性があるのかを数字で把握でき、リスクに備えることができます。必要な開業資金としては、次の項目が考えられます。
☑1.施設資金
☑2.内外装資金
☑3.機器・設備資金
☑4.運転資金
☑5.広告資金
☑6.求人・採用資金
⑤開業場所の選定
具体的な事業内容が決まった後は、治療院を開業する場所を選定します。選定する際に気を付けるポイントは以下の通りです。
立地・エリア
治療院の立地は物件選びの中で最も重要です。ターゲット層がよく来る場所でわかりやすいかどうか、院の競合がいないか、などをチェックします。交通の利便性が良く、競合が少ないと患者の獲得やスタッフ採用に良い影響を与えます。
面積・規模
治療院は、使用する機器や設備の大きさや、受け入れる人数によって必要な面積が大きく変わります。施術する際の個室以外にも、エントランスやカウンセリングスペース、物販スペースなどの確保も考慮しなければなりません。狭過ぎると圧迫感がある上に安っぽく見え、広過ぎても利用者は落ち着きにくいです。
ターゲットや院の運営方針に最適な広さを見つけることが大切です。
周辺環境のリサーチ
物件やエリアの特性を知るだけではなく周辺の環境も大切です。周囲のオフィスビル、飲食店の有無や雰囲気、治安なども顧客獲得を担うポイントです。また、周辺の治療院やその他医療施設の有無なども、事前に把握しておく必要があります。
⑥物件選び
開業エリアが決まったら、次は物件選びです。ここでは、物件の探し方と、内見する際のポイントを解説します。
物件の探し方
効率的な物件の探し方は、インターネットの物件サイトで希望物件を絞り込み、サイト経由で不動産仲介業者に行く方法です。また、不動産業者に理想の物件を相談することで、専門的な意見を得られます。
その他、該当するエリアの不動産会社に直接訪問すると、インターネットに上がっていない非公開の優良物件について教えてくれる場合があります。また、自身で周辺のエリアを歩き、アクセスの良い空き施設を探してみるのも効果的です。
急ぎで探さなくてはならない場合もあるため、その時の状況にあった方法で物件を探す柔軟さが必要です。
内見のポイント
物件を探す際、絶対に外せないのが内見です。データ上では好条件な物件でも、実際に内見に行くとギャップを感じることが多々あります。同時に、物件の希望条件を考えていた時点で気づけなかった、思わぬ重要ポイントや隠れたニーズを洗い出すこともできます。
物件そのものだけではなく、周辺環境を確認できるのも内見のメリットです。特に内見時に見ておくと良いポイントを以下に記載します。
【物件】
・入口の入りやすさ
・体感の広さ
・間取り
・設備内容
・コンセントの有無や数
【周辺環境】
・アクセス
・周辺の雰囲気
・競合施設の有無
・治安
・ターゲット層が歩いているかどうか
⑦レイアウト設計、必要な備品や機器の選択
物件選びが終わったら、レイアウト設計、必要な機器や備品の準備にとりかかります。
レイアウト設計
レイアウト設計で内装業者に相談するときは、事前に保健所で定められている「構造設備基準」を伝えなければなりません。構造設備基準は、治療院の種類によって違うので、しっかりと確認する必要があります。
また、施術の流れをふまえて動線や機器の設置スペース、コンセントの配置などもすべて考慮して、一度、平面図にイメージするレイアウトを描くことをおすすめします。
機器の準備
治療院の機器は、施術に大きく関わり、経営を左右するほど重要です。開業場所や患者層、施術方法に合ったものを中心に、予算のなかで優先順位をつけて選定することで、適切な機器を選ぶことができます。どのような施術をするかで、用意するものも変わってきますが、最低限必要な設備として以下のものが挙げられます。
- 患者用ベット
- 施術用、待合用のイス
- 施術用のタオルやブランケット
- 消毒用のアルコール
- 体温計
- 問診票
- バインダー
- パソコン
⑧新規開設手続き
治療院を開設する場合は、開設後10日以内に開設届を保健所へ提出する必要があります。新規開設手続きの流れは、以下の通りです。
- 事前相談:平面図や提出書類等で準備可能なものを保健所に持っていく。
- 工事、施設完成:新規法人は法人認可が必要。
- 開設:開設日が診察開始日でなくても構わないが、開設日には診察が出来る状態にしておくことが必要。
- 届出:開設後10日以内に開設届を提出する。
- 実査:保健所の監視員がおこなう。
⑨集客方法の策定
新規患者の数は周辺での認知度によって左右されるため、地域への広告宣伝活動が必須です。そのため、治療院を開業する準備が整ってきたら、集客方法を策定します。集客方法はさまざまな手段があり、例えば、ポスティングや地域の情報誌への掲載などが挙げられます。
また、若年層の見込み客の多くは、治療院を選ぶ際に、地方紙やチラシなどよりも、来院者の口コミやホームページなどといった、インターネット上での情報を活用することが多いです。そのため、現在では、WebサイトやSNSなどを活用した集客も重要になっています。
⑩各種届け出の提出
治療院を開く準備が全て整ったら、届け出を提出します。治療院を開業するときに必要な届け出は以下の通りです。
- 開設届
- 契約記号番号
- 共催連盟承諾番号
- 防衛省番号
- 労災保険指定期間番号
- 個人事業の開業/廃業等届出提出書
治療院向けの予約システムとは
治療院の予約システムは、院の予約や顧客管理を自動で行うシステムです。院における業務の効率化はもちろん、集患に役立つ機能を数多く搭載しています。ここでは、予約システムを導入する目的と予約システムの導入メリットについて解説します。
予約システムを導入する目的
予約システムを導入する主な目的は、治療院の予約者の利便性を向上させることです。また、運営側も業務効率化や費用削減などに寄与でき、円滑な治療院の運営が実現します。
予約システムを導入するメリット
予約システムを導入することで、治療院の無人受付において大きな手助けとなります。以下は、そのなかでも特に効果的なメリットです。
・業務効率化
予約システムは予約受付や患者の情報を自動で管理します。人の手により紙やExcelで管理する必要がありません。書き間違いや聞き間違いなどの人為的ミスも発生しなくなり、正確で効率的な治療院の運営が実現します。
・費用削減
予約システムの自動管理機能は、費用の削減にも効果的です。予約や患者の情報はデータ化されるので、大量の紙や管理するスタッフに費やしていた経費は低減されます。
・マーケティングの強化
予約システムを通じて集められる顧客データを分析し、ターゲット市場の動向や顧客需要を把握することができます。このデータを基に、効果的なマーケティング戦略を立案可能です。
・顧客体験の向上
予約の確認や変更をオンラインでかんたんに行えることで、患者の利便性が向上します。また、待ち時間の短縮やスムーズな受付が実現し、顧客満足度も高められます。
まとめ
今回は治療院を開業するために必要な準備と具体的な10段階の流れを解説しました。
治療院は主に指圧院、接骨院・整骨院、鍼灸院の3つに分けられます。それぞれ提供する施術内容が違い、その内容に適した資格を取得しないと開業することができません。資格を手に入れて、正しい開業手順を確実に踏むことで、治療院の経営の成功につなげられます。治療院の開業を検討されている人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
治療院の予約受付には、予約システム「RESERVA」がおすすめ!
画像引用元:RESERVA公式ホームページ
治療院の予約受付におすすめの機能が豊富な予約システムRESERVAを紹介します。「RESERVA(レゼルバ)」は導入数26万社を超え、国内シェアトップクラスの実績を誇るクラウド型予約管理システムです。RESERVAは、業界・業種問わず350種類以上の業態で利用されています。
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