2020年に厚生労働省が発表している「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」で、2010年には9万2421人であった「はり師」は、2020年には12万6798人まで増加しました。加えて、2010年には9万664人だった「きゅう師」は、2020年には12万4956人まで上昇しました。
こうしたニーズの高まりから、独立して自身の鍼灸院の開業を考える人も多いでしょう。鍼灸院の運営をはじめるとなった際、運営方針の確立は重要なポイントです。鍼灸院では、有人であるべきポジション、有人か無人かを方針で決められるポジションがあります。開業前にどのような院にしたいかを深く考え、運営方針を固める必要があります。
そこで本記事では、鍼灸院における有人運営、無人運営それぞれの特徴や実際に運営する際のポイントなどを解説します。
運営方針ごとの特徴
個人事業は、運営方針によって費用や施術のクオリティなどが大きく異なります。鍼灸院では、鍼灸師のポジションは必須であり、現代技術では完全に機械やシステムにとって代わることはできません。しかし、その他の各業務において、システム導入で負担を軽減することができます。特に受付事務や予約業務に関しては、無人化できるシステムがあります。
今回は有人と無人それぞれのメリットとデメリットを以下にまとめました。
| メリット | デメリット |
有人運営 | ・トラブル対応の迅速性 ・患者のロイヤリティ向上 | ・スタッフの人件費 ・予約の煩雑化 ・人的要因のミス |
無人運営 | ・人権費の削減 ・セキュリティ対策 ・スムーズな決済対応 | ・初期投資やメンテナンスの費用 ・技術的障害 ・緊急事態への迅速な対応の難しさ |
有人運営
有人運営の最も大きなメリットは、患者と直接的なコミュニケーションを取れる点です。これは信頼関係の構築や個人のニーズに対応できるなど、鍼灸院において重要な意味があります。例えば、患者とのトラブルや急な予定変更に柔軟な対応が可能です。人とのコミュニケーションを重視した患者をターゲットとするなら、有人の受付対応で患者満足度やロイヤリティを向上できます。
一方で、有人運営では予約管理や個人情報の管理、スタッフの管理など膨大な量の情報を人が扱うため、人為的ミスを誘発する可能性があります。鍼灸院の受付にスタッフを雇う際には、スタッフ1人あたりの人件費がアルバイトでも時給1,000円から1,500円ほどかかります。人件費の予算を計画を立てたうえで、スタッフを雇用することをおすすめします。
無人運営
鍼灸院の受付を無人化することで、人的要因のミスがない予約のスケジューリングや受付時間の短縮など、効率的な運営が見込めます。人が行うより迅速に管理を行え、患者の待ち時間を減らし、診療効率の向上につなげられます。例えば、予約システムの導入で、予約管理の効率化のみならず、受付のスタッフが不要になります。スタッフにかかる人件費の削減により、運営費の節約や診療料金を低く抑えることが可能になります。
しかし、無人化には多くの問題もあります。無料で導入できるシステムもありますが、多くのシステムが有料です。そのうえで、人件費をより安く抑えられるかを判断する必要があります。受付のシステム化では、電子的エラーやネットワークエラーなど技術的な障害が発生することもあります。緊急事態に対応できるスタッフがいない場合、対処に遅れることがあります。
これらの問題を事前に予測し、発生したときの対策を考慮したうえでシステムの導入を試みる必要があります。テクノロジーの導入は、鍼灸院の運営を大きく便利に快適にする一方で、人間の感受性やコミュニケーションに取って代わることは難しいことを理解しなくてはいけません。
スタッフ採用における要点
優秀なスタッフを採用するために重要なポイントを紹介します。
採用する目的を明確にする
どのような役割のスタッフを採用するのか、どの仕事を任せるために雇うのかなど、目的を明確にしてから求人情報を公開しましょう。採用後の仕事内容が明確でないと、応募者の減少や採用後の早期退職が予想されます。
鍼灸院の場合、鍼灸師のほかに、受付事務といった役割があります。採用目的をはっきりさせて求人を出すことで、応募者との齟齬が無くなり、トラブル発生の回避につながります。
採用条件を具体化する
求人情報には、明確な目的と同時に、具体的な実務内容が求められます。未経験可や週2日以上勤務など、求める条件を詳細に提示することが重要です。働いた際のイメージがつきやすく、入社後に応募者が違和感を持ちにくくなります。
採用条件で重要なポイントは、応募のハードルを上げすぎないことです。高い希望や条件が多いと、応募すらない状態が続く可能性があります。これは外せないという必須条件や要望を明確にし、無理に求めすぎないことで応募者が集まりやすくなります。また応募方法も、履歴書不要や専用サイトからの応募など、より手間のかからない方法の導入が理想的です。
鍼灸院の強みを押し出す
求人サイトなどでスタッフを募集する際、月収〇〇万円以上可能や週2日勤務可能など鍼灸院の強みとなるポイントをアピールが必要です。ただし、強みをただ並べたり誤解を与えたりする内容は、逆に求職者を遠ざけることがあります。ここでは鍼灸院のアピールポイントを強調できる方法を5つ紹介します。
・自院のビジョン:自院の価値観や目指している方向性を明確にすることで、応募意欲が高まり、求めている人材とも出会いやすくなります。
・環境の特徴:仕事の雰囲気や、院内環境など具体的な職場の特徴を示すと、求職者自身が働く想像をしやすくなります。
・成長の機会:働いて得られるスキルや知識を記載することで、やる気のある求職者を得られる可能性が高まります。
・福利厚生:健康保険、有給休暇制度、退職金制度、フレキシブルな勤務時間など具体的な福利厚生の説明があると、求職者は安心して応募できます。
鍼灸院の予約システムとは
鍼灸院の予約システムは、患者の利用状況や予約管理ができるシステムです。予約システムは、運営側が設定した施術項目を選び、実施時期を確認するなど、運営の効率化につなげられます。
予約システムの導入目的
予約システムの主な導入目的は、利用者が希望時間と施術項目を自由に選択し、鍼灸院の利用を促進できます。運営側は、利用者の多様なニーズに沿って、詳細の情報を掲載し、鍼灸院利用の魅力をアピールすることが肝心です。
予約システム導入のメリット
予約システム導入のメリットは、管理作業における自動化や効率化を図れることです。これにより、重要なミーティングやプロジェクトの進行に影響を与えることなくスムーズに来訪者の予約管理につなげられます。また、手動管理に伴う人件費や人為的ミスによるコストを削減もでき、経営効率を高められます。
まとめ
今回は鍼灸院における、有人運営と無人運営それぞれの特徴やポイントについて解説しました。利用者満足度、セキュリティ、人件費などさまざまな観点から自分のクリニックにあう方針を決めてからの開業がおすすめです。鍼灸院の運営を考えている人はぜひ参考にしてください。
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画像引用元:RESERVA公式ホームページ
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